今回は絵本『トカゲのすむしま』をご紹介します。
ネタバレありなのでお気をつけください。
講談社絵本新人賞を受賞された作品です。
作・絵ともに、串井てつお先生が担当されています。
新品での入手が現在は難しいので、ぜひお近くの図書館で借りてみてください。
◎あらすじ
とある島に、歳をとったトカゲが一匹暮らしていました。
海鳥たちが毎年島にやってくるのを楽しみに暮らしていたのですが、ある日海に油が広がりたくさんの海鳥が亡くなっているのを目の当たりにします。
そんな中、一羽の小さなウミスズメを瀕死の状態で見つけました。
トカゲは甲斐甲斐しく世話を焼き、ウミスズメは回復していくのですが……。
◎ここがすごいポイント1:絵の上手さ・綺麗さ
とにかく絵が上手く、綺麗なんです!
やや写実的なタッチで、実際の生き物の姿がありありと伝わってくるようです。
リアリティのある絵柄なのが本当にすごいと思います。
絵から伝わってくる、登場動物たちの生き様を感じ取ってください。
見返しのイラストも、ラストが分かるとすごく印象に残りますよ。
◎ここがすごいポイント2:現実の問題についても考えさせられる
作中で、海に油が広がり被害を受ける海鳥が登場します。
現実の世界でも、タンカーなどの海難事故で被害を受ける鳥がいることを思い起こしました。
事故の描写自体はそれほど多くはないですが、それでもウミスズメの家族はみんな死んでしまっており、悲しい気持ちになります。
人間と生物・環境の関係について考えさせられました。
◎ここがすごいポイント3:切ないラスト
島に一匹で暮らしていたトカゲは、ウミスズメと友情を築きます。
ですが、トカゲはウミスズメと島でずっと暮らすことをよしとしませんでした。
ウミスズメに仲間を探しにいくよう促し、旅立たせます。
安易に一匹と一羽でずっと仲良く暮らしましたとせず、別れを正直に描いているのが素晴らしいですね。
◎まとめ
一匹だったトカゲの元に現れたウミスズメとの友情と別れ。
子ども向けの絵本でここまで実直に描いているのが驚きですよね。
管理人はこの絵本を読んでいると涙腺が緩くなります。
この記事を書いているときも泣きながら書いています。
動物学者の今泉忠明先生の解説文章も一ページあり、そちらも見逃せない箇所です。
少し切ないけれど感動する物語を読んで泣きたい時、美しいイラストを見たい時に、ぜひ『トカゲのすむしま』を読んでみてくださいね!